はじめに
住まいづくりのはじまりに大切なのは、お互いを知り、想いを通わせること。
どんな時間が心地よく、どんなものに囲まれて暮らしたいのか。
大切にしていることや、ふとしたこだわり、何気ない日々の習慣の中に、その人らしさや暮らしへの想いが宿っています。
だからこそ、じっくりと耳を傾け、私たちのこともお話ししながら、少しずつ気持ちを重ねていく時間を大切にしています。
信頼が育まれ、価値観が響き合うと、住まいのかたちは自然とその人らしさを映し出すものになっていく。
ただ要望を形にするのではなく、その想いの背景にあるものまで感じ取りながら、一緒に考え、一緒に創り上げていくことが、心から満たされる住まいが生まれるのだと思います。
豊かな暮らしとは
朝日が差し込む窓辺で、温かいコーヒーを飲む。
そんなささやかな幸せが、実は暮らしの真髄なのかもしれません。
家づくりって、ついつい見栄えや性能にこだわりがちですよね。
でも本当に大切なのは、そこでの暮らしぶり。
高価な設備を整えることじゃないと思うんです。
部屋の空気が動く音に耳を澄ませば、季節の移ろいが感じられる。
畳の香りが漂う和室で深呼吸すると、なんだかホッとする。
キッチンからは、家族の笑い声が聞こえてくる。
素敵な暮らしって、意外とシンプルなものかもしれません。
「特別」を追い求めすぎると、かえって窮屈になってしまうような気がします。
建築家の作品のような家より、肩の力が抜ける場所。
それこそが私たちにとって理想的な住まいだと思います。
よく見かけるのは、完璧を求めすぎる家づくり。
でも暮らしに寄り添う家は、少しずつ育っていくもの。
新築の輝きは、時とともに深みのある味わいへと変わっていきます。
たとえば、年月を重ねた無垢の床、真鍮のドアハンドル。
それらは使い込むほどに艶が出て、独特の表情を見せてくれるんです。
大切なのは、建てた時からずっと、「ここに帰ってきたい」と思える場所であること。
家族の歴史が刻まれていく。
思い出が染み込んでいく。
そんな住まいこそが、本当の意味で豊かな暮らしを育んでいくのではないでしょうか。
時には、夕暮れ時のリビングで、ただぼんやりと過ごすのも素敵です。
窓の外では季節の風が通り過ぎ、部屋の中には穏やかな空気が流れている。
こうした何気ない瞬間の積み重ねが、かけがえのない日々を紡いでいく。
それが、私たちの考える「暮らしの豊かさ」なんだと思います。
要望の本質を探る
旅の計画を立てるとき、つい「あそこも」「これも」と予定を詰め込みたくなるもの。
でも、ふと立ち止まって考えることはないでしょうか。
「自分が本当に求めている旅とは、どんなものだろう?」
家づくりも、それとよく似ています。
「あったら便利」「念のためにこれも」と要望を重ねるうちに、本当に大切にしたいことが見えにくくなる。
だからこそ、私たちは一緒に、本当の目的地(要望の本質)を探すことから始めます。
たとえば、「広いリビングがほしい」という希望の奥には、「家族と心からくつろぎたい」という想いがあるかもしれません。
「収納をたくさんつくりたい」という要望の裏には、「必要なものだけに囲まれて、すっきり暮らしたい」という願いが隠れていることも。
一度立ち止まり、これまでの暮らしを振り返りながら、これからどんなふうに暮らしていきたいのか、じっくり考えてみる。
そうすることで、ただ「足りないものを補う」家づくりではなく、「本当に求める暮らしを形にする」家づくりへと変わっていきます。
このプロセスの中で、自分にとって何が大切なのかが、少しずつ見えてくる。
その発見こそが、住まいづくりの本質なのだと思います。
暮らしには、さまざまな要素が絡み合っています。
それを一つひとつ丁寧に整理しながら形にしていくことが大切です。
私たちは、表面的な要望にとどまらず、その背景にある想いや暮らしの本質を探り、住まい手自身も気づいていなかった「本当に求めるかたち」を見つけ出すことを心掛けています。
土地とともに、暮らしを考える
家を建てるうえで、土地はただの「場所」ではなく、暮らしの豊かさを左右する大切な要素です。
ひかりが入り、かぜが通る。
窓からどんな景色が見えるのか。
その土地の気候や風土、周囲の環境はどうか。
こうした要素が、住まいの居心地を大きく変えていきます。
私たちは、土地探しの段階からご一緒することもできます。
購入を検討している土地に対して、建築家の視点でアドバイスをしながら、その土地が持つ可能性を丁寧に読み解いていきます。
例えば、法的な条件が建築計画にどんな影響を与えるのか。
目には見えにくいコストがどこにかかるのかを事前に知ることで、より納得のいく判断ができるかもしれません。
また、一見すると欠点に思えることも、見方を変えればその土地ならではの魅力に変わることがあります。
どこに陽が差し、どの方向から風が抜けるのか。
そこに立ち、座り、日向ぼっこをしながら感じることがたくさんあります。
豊かさは、土地の外にあるものを、どう住まいに取り込むかで決まる。
そう考えながら、家だけでなく、その土地とともに心地よい暮らしのかたちを一緒に探していきます。
「家をつくる」ということ
家を建てることは、大きな決断です。
悩んだり、考えたり、ときには思いがけない選択を迫られることもあるでしょう。
でも、そのひとつひとつの過程が、住まいへの愛着を育んでいきます。
私たちは、家づくりそのものが価値のある体験だと考えています。
図面の上で思い描いていた住まいが、少しずつ形になっていく。
現場に足を運び、木の香りに包まれながら大工の手仕事を間近で感じる。
ときには自ら壁や床に手を加え、住まいに触れることで、その空間がより身近になっていく。
そうした時間を経ることで、「家を買う」のではなく「家をつくる」という実感が生まれるのです。
家は、建てたら終わりではなく、そこから暮らしがはじまるもの。
家づくりの過程で見つめた「自分にとって心地よい暮らし」は、住まいが完成したあとも続いていきます。
そしてこの体験を通じて得た、その住まいに対する愛着を持ち、大切にする気持ちこそが、暮らしをより豊かなものにしてくれるはずです。
私たちはそんなかけがえのない時間を、住まい手とともに大切に育んでいきたいと考えています。