家とくらしかた

余分を省き、余白を残す。小さくとも豊かな家。

初めてご相談を受けたのは、11月の上旬ごろ。
お二人が良く行かれるBarのマスターが弊社を進めてくれたということでご来店いただき、
お酒の話や、カヌーやキャンプといった趣味の話でとても盛り上がりました。

Barは弊社が照明工事をさせていただいたお店。
その店の落ち着いた雰囲気や一枚板のカウンターを自宅にそのまま活かしたいというのが奥様のご希望。
外壁の色はワインレッドに。これがご主人のご希望。

ご結婚されたばかりのお二人はとても柔らかで、その柔らかさの中に芯がある印象でした。
共に仕事をされながら家事も分担されるので、お二人が共に使い易いキッチンや片付けやすい動線を。
そして仕事から帰ったらゆっくりと家を楽しめるような落ち着きのある空間のイメージが湧きました。

土地探しもご一緒させていただき、交通の便利さや子育て環境に考慮して前面道路が広く、
車通りの少ない閑静な住宅街にある土地をお勧めしました。

敷地は東側と南側が建物に囲まれた扇状の角地形状敷地。
日あたりや季節風と卓越風を考慮し、西側へ建物を向け、敷地に余裕をもたせて、ゆるやかに街につなげています。

夕方の西日対策は、リビングの大開口の外に、
屋根が深く三方を建物に囲まれた広い縁側を設けることで、西からの直射日光が室内に入りづらくなるようにしました。

縁側の外には、山登りもお好きはご主人をイメージして、なだらかな丘を造り、芝生を敷き詰め、
山採れのヤマモミジやナツハゼを植えました。
植栽と縁側を懐とすることで、ゆるやかに区切りを設けてプライバシーと景観を整えました。

お風呂上りには縁側に座り、風に揺れるモミジをみながら涼まれているのだそう。
眠たくなると、隣の和室に布団をひいてそのままゴロン。
旅館のような日常に、流れる時間に身をまかせてくつろいでいただけます。

外壁には、屋根材として使われるカラーベストを張り、
ワインレッドの色と素材の重厚さを活かしたシンプルな形状に仕上げました。
出来る限り階高を抑え、軒先の水平ラインを強調させ、重心を下げて落ち着きのあるシルエットにまとめました。

室内は、明かりを最小限に抑えることで、庭への抜けを感じさせます。
アクセントとなる壁にはシラスの塗り壁を使い
家の中心には3.5mもあるパオロッサ無垢一枚板のカウンター。
キッチン側の床を一段下げる事で、キッチンに立つ人とカウンターに座る人の目線が合い、会話がはずみます。

あえてダイニングテーブルを置かず、カウンターに台所から手を伸ばして配膳する料理屋スタイルです。
食事をより自分らしく、雰囲気よく、楽に行えるようにしました。
夜には照明を絞り、お好みのジャズを聴きながら大好きなお酒を嗜まれています。

キッチン後ろの小窓は浴室とつながります。
お風呂に入りながらも、いつも家族を感じられる仕掛けです。

玄関横にはウォークインクローゼット、洗面室、キッチンへと回廊動線を設け、
帰宅時してからの作業がスムーズにストレスなく整理することでき、
気持ちのスイッチも切り替えられやすくなるように計画しました。

洗面室の広さは室内干しもできるよう、ゆとりを持たせました。
洗濯、乾燥が一室で行え、隣のウォークインクローゼットに収納できます。

忙しい毎日の中で、家事を楽に済ませて家を楽しむ、
そんなホッとできる家になりました。

基本情報
 構造   / 木造2階建て
 敷地面積 / 212.40㎡
 建築面積 / 66.66㎡
 床面積  / 1階63.02㎡ 2階35.19㎡ 延べ床面積98.21㎡
 性能   / 耐震等級3 耐風等級2 UA値0.5W/㎡・K 省令準耐火仕様

主な仕上げ材料
〈外部〉屋根 / ガルバリウム鋼板
    外壁 / カラーベスト
〈内部〉床  / 松無垢フローリング・タイルカーペット
    壁  / クロス貼り・中霧島壁左官仕上
    天井 / 梁あらわし・クロス貼り

建築費用 2000-2500万円代
各種申請、構造計算、造園、カーテン、一部家具含む