家とくらしかた

アトリエのある家

森の奥深くに佇む工房のような住まい。
しかし、ここは住宅地にある。
にもかかわらず、一歩足を踏み入れると、街の喧騒は遠のき、森の気配と水の揺らぎだけが静かに広がる。

この家の主は染物作家。
布に色を重ね、唯一無二の表情を生み出す仕事に向き合っている。
その住まいもまた、作品と響き合う場所であるべきだった。
室内は静かに整え、余計な装飾を省いた。
作品がそこにあるだけで場が満たされ、色彩が息づく。

外観には焼杉を採用。
森の中で朽ちていく木々のように、時間の流れとともに自然へと馴染むことを意図している。
住宅らしさを抑え、むしろ公共建築のような端正な佇まいを目指した。
作家としての意志が、住まいの輪郭にも表れている。

造園は樹木医でもあるプランタの清野氏に依頼。
人工的に整えるのではなく、そこに元から森があったかのような景色をつくり出してもらった。
敷地内には水盤を設え、風が吹くたび水面が光を受けて揺れ、静かな空間にわずかな変化をもたらす。

作品を乾かすための舞台も設計。
風が吹けば、染め上げられた布がたおやかに揺れ、陽の光を浴びながら深い色を帯びていく。
その光景こそが、この住まいを象徴するものだ。

住まい手は、物事に対して清らかで、芯のある意志を持つ人。
その作品にもまた、揺るぎない思想が映し出されている。
この「アトリエのある家」から、新たな色が生まれ、さらなる飛躍へと続いていくことを願っている。

基本情報

 構造   / 木造2階建て
 敷地面積 / 255.36㎡
 建築面積 / 60.86㎡
 床面積  / 1階60.86㎡ 2階47.62㎡ 延べ床面積108.47㎡
 性能   / 耐震等級3 耐風等級2 UA値0.6W/㎡・K 省令準耐火仕様

主な仕上げ材料
〈外部〉屋根 / ガルバリウム鋼板
    外壁 / 焼杉
〈内部〉床  / 杉板 松煙+柿渋塗装
    壁  / 珪藻土
    天井 / 珪藻土、杉板 ウッドロングエコ