日々の綴りごと

イタリア旅 ヴェローナ、パドヴァ

ヴェローナ編

ヴェローナの街並みを歩いていると、まるで中世の絵画の中に迷い込んだようだった。
石畳の小道、色鮮やかな花が咲き乱れる中庭があり、そして、街の至るところに歴史を感じさせる建造物が立ち並んでいた。
フィレンツェとはまた違った雰囲気の中、この街の一つ目の目的地、「サン・ゼノ教会」へと向かった。
北イタリアを代表するロマネスク建築の傑作と聞いていたが、その威厳のある姿は想像をはるかに超えていた。

4世紀に建てられた教会を起源とし、12世紀前半に現在のロマネスク様式に再建された。
教会の正面には、聖ゼーノの生涯を描いた精巧なブロンズ製の扉があり、内部は厚い壁と丸いアーチが特徴の静謐な空間が広がる。
建築的には、構造の安定性と素材の使い分けが秀逸である。
太い柱と丸いアーチは、地震にも強い構造を作り出し、石材やレンガ、木材が巧みに組み合わされている。
この教会は、単なる建物ではなく、中世の人々の生活や信仰が息づく場所だった。
厚い壁は外部からの侵入を防ぎ、内部の温度を一定に保ち、丸いアーチは安定感のある空間を作り出していたと考えられる。
つまり、サン・ゼノ教会は、中世の技術と美意識が融合した、歴史と文化を象徴する建築物と言えるだろう。

















続いて、今回の旅の最大の目的であった「カステル・ヴェッキオ博物館」を訪れた。
建築家カルロ・スカルパの独創的な空間設計に心を躍らせながら、遠くから建物を見つけた時の高揚感は、今も鮮明に覚えている。

ここは14世紀に建てられた中世の城を改修した博物館。
1959年から1973年にかけて、建築家カルロ・スカルパによって現代的な博物館へと生まれ変わった。
スカルパの建築の特徴は、既存の建物を尊重しながら、新しい要素を加えることで、歴史と現代が共存する空間を作り出す。
ここでは、彼が得意とする光と影のコントラストや、素材の質感へのこだわりが随所にみられる。
帯鉄を格子状に編んだ引き戸など、スカルパならではの精密なディテールが見ものである。
















ヴェローナの街並み






異国の地でランクル40を発見。
日本人として誇らしい気持ちになる。




ランチ 塩ダラのにこみ ポレンタ添え








パドヴァ編

次に向かったパドヴァでは、「スクロヴェーニ礼拝堂」に足を運んだ。
14世紀初頭、高利貸しで財を築いたエンリコ・スクロヴェーニが、その罪の償いと一族の霊廟として建立。
礼拝堂のテーマは「救済」で、聖母マリアの慈愛に捧げられている。
壁と天井を覆い尽くすジョットのフレスコ画は、想像をはるかに超える美しさで、ただただ圧倒されるばかり。
礼拝堂内部を彩るのは、ジョット・ディ・ボンドーネによるフレスコ画である。
キリストの生涯や最後の審判など、聖書物語が鮮やかに描かれており、その写実的な表現と情感あふれる人物像は、後のルネサンス絵画に大きな影響を与えた。
特に、キリストの生涯を描いた一連のフレスコ画は、西洋美術史における重要な作品群の一つとして評価されている。
建物自体は、ロマネスク様式とゴシック様式を融合させたシンプルなデザインである。
しかし、内部のフレスコ画の圧倒的な存在感により、礼拝堂全体が一つの芸術作品として成立している。










ヴェローナの街並み


















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ヴェローナとパドヴァは、フィレンツェとは異なる雰囲気を持ち、それぞれの街の文化と時間の流れに触れることができた。
穏やかな空気が流れる中、人々は自分らしく、思い思いの時間を楽しんでいた。
楽器を奏でる人、日向ぼっこを楽しむ人、ベンチで談笑する人々――その何気ない日常の風景がとても印象的だった。

そして次はいよいよ旅の最終目的地、水の都・ヴェネツィアへ。
水面に揺れる街がどんな景色や空気を見せてくれるのか。
また新たな世界観への期待とともに次へ向かうことにする。