「間」を育てるということ
人と人が同じ場所に身を置くとき、そこには言葉では測れない何かが、静かに立ち上がってきます。
誰が主役というわけでもなく、話す人がいて、耳を澄ます人がいる。
近づいたり、少し距離をとったり、言葉が交わされる時間と、あえて沈黙を選ぶ時間が、自然に行き来する。
そうした微細な揺らぎのなかで、その場ならではの空気が、いつのまにか育っていきます。
家づくりもまた、同じだと感じています。
一度の打ち合わせで分かり合えることは、ほとんどありません。
何度も顔を合わせ、言葉にしきれない感覚を確かめ合いながら、少しずつ互いの輪郭が見えてくる。
何気なく交わしたひと言が、ある日ふと、別の意味を帯びて胸に残ることがあります。
理解とは、用意された答えを受け取ることではなく、時間の中で、静かに熟していくものなのかもしれません。
心地よい場には、独特の張りがあります。
緊張しすぎることもなく、緩みきることもない。
安心感の中に、ほんのわずかな緊張が共にあることで、人は少しずつ、本当の気持ちを差し出せるようになる。
建築もまた、そうした関係性の延長線上にあるものだと考えています。
形や意匠が先にあるのではなく、人と人のあいだに生まれた感情や信頼が、やがて空間として姿を現していく。
完成した建物は、つくり手の主張ではありません。
そこに暮らす人の生き方や価値観が、無理なく滲み出た結果として、そこに在ってほしい。
だからこそ、私たちは「間」を大切にします。
急がず、飾らず、同じ時間を重ねること。
その積み重ねの先に、その人にとって本当に必要な住まいが、いつのまにか、静かに輪郭を結び始めるのだと感じています。
